WT WELLBEING TOKYO

【第3回】日沖健氏 日沖コンサルティング事務所代表 vol.4

Date 2018.12.03

谷家理香の周りの素敵な生き方をされている方達に、その方が考えるWell-Being Lifeとは?をインタビュー形式で伺った内容をご紹介する、「あの人のウェルビーイング」。第3弾は、谷家の高校の同級生である日沖健さんにお話を伺いました。

プロフィール:
経営コンサルタント。日沖コンサルティング事務所代表。昭和40年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・JXTG)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、平成14年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。産業能率大学総合研究所・兼任講師。

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期待値を下げない幸福

ー仕事の中ですごく悩んだりすることはないんですか?

悩みっていうのは自分の思い通りにしようとするから悩むわけじゃないですか。僕の仕事の場合は、相手の意向に合わなかったりすることはしょっちゅうあるけれど、相手の考え方を変えようというようにすることはないんです。合わなかったらそこで終わり。だから悩むことはありません。

ーストレスがないっていうのは、すばらしいですね。ヨガも瞑想も必要ないですね。仕事以外のことのお話があまり出てこないんですけれど、音楽やジャズは好きですよね。自分で一人でジャズ喫茶に行ったり。

週に1~2回ライブに行ってますね。ジャズって「ジャズに名曲はない、名演あるのみ」という言葉があるように、即興演奏なので、すばらしい即興を聞けたときは幸せですね。もし優先順位の中に趣味があったら、健康の前くらいに入ってくると思う。

ー食事に関してはどうですか?

食事はジャズと同じで、期待を超える料理を食べたときは幸せを感じますよね。食ってお金をある程度出したり、ちゃんとリサーチすればおいしいものが食べられるじゃないですか。ある程度健康になろうとするのにはそんなに努力する必要はないですよね。健康は75点くらいをキープできればよくて、食事に関しては努力次第で70点でも120点でも変えられる。そういう意味で、健康のほうが食事よりも上に来ています。

ー日沖君にとってWell-being とはなんですか?

大切にしていることについて、心理的に満たされた状態。特に、期待値を下げて満たすのではなく、発展的に満たすこと。また、他人の幸福にどれだけ“おせっかい”するか、です。

今日のインタビューに来る前に「幸福の経済学」の本を読んだんですけれど、幸福を語りだすと、結局日本人よりもブータンの人のほうが幸福だということを言われているじゃないですか。それって違うと思うんですよ。ブータンの人は、こんな伝統的な生活ができて家族が一緒に生活ができていいでしょう、と。でもそれは期待値を下げられているからそう思っていること。

日本についても同じです。日本って、こんなに安定していていいでしょう、日本ってこんなに尊敬されていていいでしょう、と。日本は本当は国際競争で負けているのに、今の日本は素晴らしいでしょうと言って、期待値を下げることによって、幸せだとアピールをしている。ブータンも情報を遮断して、他国と比較ができない状態で、いい生活ができていて幸せだと思わせている。幸せになるというのは実に簡単で、期待値を下げさせれば良いわけです。でもそれはおかしいと思う。期待値を下げるではなくて、期待値は高いままで、実際に幸福を感じられるのが本当の幸せなんだと思います。

幸福論の議論で難しいのは、人によって大切にしているものが違うわけじゃないですか。Well-beingって企業単位で推進されていることがよくあるんだけれど、従業員が一人一人大切にしているものは違うわけで、どこまで企業としておせっかいするのかな?というところが難しい点だと思っています。Well-being の定義って要はバランスですよね。バランスっていう時点でもうおせっかいになるわけじゃないですか。人によって健康が大切な人もいれば仕事が大切な人もいて。仕事が充実しているけど君は家族愛が足りないんじゃない?って言われても、余計なお世話ってことになるわけですよ。総合的に高めましょうっていうのは、自分が大切にしていること以外のことも高めましょうと言っているわけで、これってまさしくおせっかいですよね。そういうおせっかいをどこまでするのかっていう話に行きつくんじゃないのかなと思っています。僕も娘に対してはおせっかいしますよ。起業や世の中に関しては、僕がやっている仕事や事業、僕が出した本に共感してくれて、もっと知りたいと言ってくれる人に対しては僕もおせっかいをしています。


ーこの前ブログで書いていた「幸せってなんだっけ?」の内容が、とても印象的で。事業で大成功するが家族がばらばらになり最期は一人寂しく死ぬ人生と、貧乏だけれども家族に囲まれて最期を迎える人生と、どちらが幸せか?という問いの設定が日沖君らしくて面白いなと思いました。
https://www.hioki-takeshi.com/2018/11/05/幸せってなんだっけ/

日沖君自信は、最期は一人でさみしくても事業で成功したほうが圧倒的に良いとのことだったけれど、その心を教えてください。

やっぱり、幸福と感じる時間は長いほうがいいからですね。貧乏な人生のほうは、さっきのブータン現象と同じじゃないですか。戦中戦後の苦しい時期に比べると生きてるだけでいいじゃない、というような期待値を下げる考え方はあまり受け入れられないですね。

ー確かにものすごい資本主義的な答えですね(笑)。面白い意見をたくさんいただきありがとうございます。Well-beingについての基準が難しい中で、自分の幸せについて明確に基準があり、迷いなく突き進まれていてとても興味深いお話でした。

谷家理香後記:
想像通り、まったく今までの方達とは違う価値観のお話しで面白かったです。このあと食事に行ったのですが、私の「Well-being」や「愛」についての意見を逆に聞かれて少し話ましたが、「お互いほとんど共感できないね」、という事で大笑いになりました。高校時代からの気の置けない友人ですので色々な話をフランクにきけますが、私自身は行き過ぎた資本主義の次の時代のWell-being や心の在り方に興味があるのですが、日沖君はこの資本主義の延長線上でのより良い世界ということを考えている。自分の幸せの基準も理路整然としていて、健康も幸せも衛生問題と同じで75%で十分という考え方がとても新鮮でした。そして人間関係や愛など自分の力だけではどうにもできないことに多大な価値を置かない、自分の力でコントロールできることで、なおかつそれを数値化しやすいものに大きな価値を置くというマインドはいつでもぶれずに安定感抜群。でも自分が本当にやりたいことがはっきりわかっていて、それに没頭できていて幸せだということはとても素晴らしいし、そこにはとても共感しました。ビジネスを飛躍的に発展させる理論・技法を創り出したら、いの一番に知りたい~♪

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